日本ではマイナーなペットのオカヤドカリですが、海外では日本より人気があるようです。

　そのため、オカヤドカリ用の餌や飼育用品など、日本では売られていないオカヤドカリグッズが販売されています。試しに「hermitcrab」「shop」「shell」などで検索してみてください。オカヤドカリの飼育用品を扱っているネットショップのサイトがたくさん表示されると思います。

　ココナッツの家やトリートなど、専門グッズが豊富にあって、うらやましい限りです。中には海外通販をしているお店もありますから、英語が堪能な方は注文してみてはいかがですか？

　日本では、この夏、大手玩具メーカーがペイントされたカラフルな貝殻とともにオカヤドカリと飼育セットを発売しました。オカヤドカリが玩具のパーツのようにプラスチックにパッキングされて売られていたり、オカヤドカリの知識がない玩具売り場での販売方法など、動物愛護と青少年の教育上の観点から批判されています。管理人も、その売り方には驚きました。その飼育セットがマスコミに取り上げられたことによって、オカヤドカリという生物がいることを知ることができたわけですが…。

　オカヤドカリに限らず、ペットの生体展示販売は基本的に避けるべきだと思います。日本では子犬や子猫なども当たり前のように展示販売されていますが、イギリスをはじめ欧州諸国では動物愛護の観点から法律で生体の展示販売が禁止されています。

　オカヤドカリのパッキング売りも、このような日本の生体展示販売についての感覚の麻痺が招いた悲劇だと思うのです。玩具店で売れ残ったオカヤドカリたちはどうなってしまうのでしょうか。

　オカヤドカリは、海中ですごす幼生期をすぎて陸に上がると、海中に戻って生活することはありません。メスが放卵をするために波打ち際まで行くことはありますが、普段は海岸近くの森に棲んでいます。

　それならば、海水は飼育に使わなくていいんじゃないか。そういう考え方もあります。一方では、海水は生命の源だから、ミネラルなどの栄養分が豊富に含まれているため、健康な甲殻作りに役立つのではないか、という考え方もあります。また、海水を摂取することで、体内に水分を吸収・保持しやすくなるという説もあります。

　どちらが正しいかは今のところ分かりません。好みの飼育法でいいと思います。でも、海水を使ったからといって、害になるということはありません。もともと海のヤドカリが陸に上がって進化したのがオカヤドカリですから、海中の記憶をDNAが覚えているのかもしれません。もちろん、溺れるほどの大量の海水に浸けてしまうことは、窒息してしまいますから問題外ですが。

　海水（または塩水）を使うとしたら、小さな浅い器に海水を貯めてオカヤドカリの海水浴場を作ってやる方法、ときどき人の手によって強制的に海水にザブンと浸す方法、流木に染み込ませたり、砂を湿らせ湿度を保つための霧吹きに用いる方法などが考えられます。

　海水浴場は、必要がなければ使われないでしょうし、必要があれば勝手に浸かってくれるでしょう。管理人の飼っているオカヤドカリの中には、流木の上から下にある海水浴場にときどき落ちているヤドカリがいます。同じ場所から落ちているので、偶然なだけなのかもしれませんが、まるで自分から飛び込んでいるかのようにも見えます。海水の中に浸かってもあわてる様子なく、しばらくそのまま海水の中を歩き回っていることもあります。本当のところはどうなのか、そのオカヤドカリに聞いてみたいですね。

　強制的に人の手で海水に浸けるのは、後述するストレスコート浴と同じ意味です。強制的なので、オカヤドカリが喜んでいるのか嫌がっているのかはわかりません。バケツに深めに海水を入れて、嫌なら出られるように岩などを入れて陸地を作っておいてやる方法もあります。

　流木や砂を湿らせたりするのに使うと、真水で湿らせたところよりもオカヤドカリが好んで集まるという飼育例があります。

　個体の好みによるだけなのかもしれませんが、海水が好きなオカヤドカリがいることは事実のようです。あるいは、餌の栄養が偏っていて、不足分を海水から得ようとしているだけかもしれませんが。

　あなたのオカヤドカリが海水を好きなのかどうか、試してみてもいいんじゃないでしょうか。

　ストレスコート浴は、オカヤドカリのベテラン飼育者たちが用いているオカヤドカリの健康法です。ストレスコートは水に薄めて使う、粘膜保護の働きを持つ水質改善剤です。アロエの抽出液が配合されているので、他の塩素中和剤より人気があります。

　ストレスコート浴のやり方は、500ccくらいのぬるま湯にストレスコートを1滴入れて、オカヤドカリを貝殻ごと浸けてやるだけです。頻度は１週間に一度くらい。弱った個体やダニなどが付いている個体は、もっと頻繁に入れてやれば治ることがあるそうです。

　ストレスコートがなければ、別の塩素中和剤でもよいし、海水や塩水を使ってもいいようです。ストレスコート入りの水や海水などは、飲み水とは別に用意してくださいね。

　脱皮は通常、砂の中に潜って行われますが、水槽の環境や個体によっては砂の上で脱皮することがあります。脱皮期間も個体によってまちまちで、1〜2週間で終わるものもいれば1ヶ月以上かかることもあるようです。

　脱皮前から活動が鈍くなり、脱皮が終わっても新しい甲殻が乾いて固くなり、体力が回復するまでは砂に潜ったままですごします。その間は、自分が脱いだ殻を食べて栄養補給します。ですから、もし脱皮した殻を見つけても片付けてしまわないようにしてくださいね。

　また、脱皮期間中のオカヤドカリは、いつもにも増してデリケートになっています。ちょっとした刺激でもストレスになり、脱皮に失敗したり衰弱したりすることがあるので、できるだけそっとしておいてあげましょう。気になるからといって、無理に掘り返したりは絶対にしないように！

　複数で飼っている場合は、他のオカヤドカリが脱皮殻を食べてしまったり、貝殻を奪ったり、中には脱皮中の仲間を食べてしまうこともあるようです。広い水槽の中で砂に潜って脱皮しているなら他のオカヤドカリからちょっかいを出される可能性は低いですが、狭い水槽や砂上脱皮のときは他のオカヤドカリとは水槽を分けた方がよさそうです。

　脱皮の予兆に気がつけば、そのオカヤドカリだけを別の水槽に移してやりましょう。脱皮が始まって以降に気がついた場合は、脱皮中の個体はいじらない方がいいため、他の仲間たちを別の水槽に移してやることになります。

　もっと簡易な隔離方法には、セパレーターを用いて水槽内を仕切ったり、ペットボトルなどを使って簡易シェルターを作り脱皮中の個体の上にかぶせる方法もあります。

　オカヤドカリの死亡原因のトップは、脱皮の失敗によるものだそうです。小さな個体より、大きな個体の方が脱皮成功率が低いというお話もあります。日頃から、よく観察して、健康的な生活を心がけてやり、少しでも脱皮の成功率を高められるよう頑張りましょう。